初鍼灸体験レポート

お灸がドラッグストアで買えるなんて知らなかった・・・。

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初心者には緑のパッケージ、柔らかい熱でおすすめ。これは煙も少ないタイプです。

トスカーナランチの数日後、今度はドラッグストアで待ち合わせ。お灸なんてプロだけの世界かと思ったけれど、実はドラッグストアにもあって、東洋医学好きな女子の愛用者も多いらしい。この日も目指す「緑のせんねん灸」は売り切れ。本当に人気あるんですね、知らなかった。

「シップとかカイロの棚にあります。赤とか青とか何色かあるけど、初心者はまず優しい温度の緑にしましょう。今持っているのは、グリーンで煙が少ないタイプ。カンタンに使えるように、工夫された製品がいろいろ出ていますよ。お灸の原料はもぐさといって、草餅に入れるよもぎを乾燥させたもの。あれの燃える匂いには精神を安定させる作用があるんですよ。ぼくは煙の香りに癒やされる気がするけど、苦手な人もいるみたいだから。」

▶お灸を買ってもどこに貼ったらいいか、ツボの場所がわからないと思うんだけど・・・確かに、インターネットで検索すれば、肩こりとか生理痛に効果があるらしいツボの情報はいろいろ手に入る。そういうものを参考にツボをさがしてみて、このあたりかな?そんなことで大丈夫なのでしょうか。

「基本は、気になるところに貼って、火を点けて、お灸が燃え尽きるまで放っておけばいいんですよ。貼ってみてね、熱い!はやり過ぎ。なんとなく温かいな、くらいで効いています。何も感じない時は、そこが冷えているからで、1個か2個続けて貼ってみるとだんだん温かさがわかるようになります。日本人は熱ければ熱いほど効果があると考えがちだけれど、そんなことはないんです。お灸は、ほんわか温かいくらいでいいんです。」

▶ほんわかくらいで効いているんですね、ひたすら熱いのを我慢する、修行みたいなものだと思っていたけれど、ちょっとおもしろそうかも。痛くない、熱くないなら、安心。
「鍼灸は痛くて熱い、怖い、と思ってる方が多いんですよ。体に針を刺したり、火をつけたりするんだから、当然です。でもちょっと知識を持てば、怖くなくなると思いますよ。なによりも自分で自分の体をケアできる、癒せるって楽しい。トラブルの原因を自分で取り除くという意味では、歯磨きと同じようなこと、と考えてもらいたいなあと思います。」

▶歯磨き!なるほどね。人間の体には700くらいのツボがあるんでしたっけ?どこがどうなって効果があるのか、よくわからない。でも確かに事実としてツボや経絡の知識が伝承されているわけだし、国家資格もあるんだから、怖がることはないのかもしれない。

鍼灸は長い歴史の中で日本人を癒してきた医術

「東洋医学は経験知、先人の実学が積み上がった医療行為です。科学的に証明できないこともたくさんあるし、西洋医学とは考え方が違います。でもせっかく日本にはツボや経絡の文化があるんだから、もっと知識を利用してもいいんじゃないかと思っています。ぼくはみなさんにもっと自分の体に敏感になっていただきたいんですよ。「未病」っていって、まだ病気とはいえない不調を東洋医学ではそう言いますが、なんか調子が悪いとか、元気がないというような「未病」の段階で、漢方や鍼灸をファーストチョイスにする人が増えてくれるといいと思っています。お灸とか指圧でツボを刺激して、自分がもっている自然治癒力を呼びさませたらいいでしょう?まずは試してみましょう。とにかく体験してみてください。なんだモトカワさん。本当に怖がりなんですねえ。」

▶バレました?私は子どもの時から花火が怖くて、火花の吹き出す棒をもって何が楽しいのかわからないようなビビリなんです。火のついたものを貼るなんて、ちょっと泣きそう。

あれ?お灸、ぜんぜん熱くないです!

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いてて・・・そこ肩じゃないんですけど!

▶勇気を出して、風見先生の指導で買ってきた緑のせんねん灸を使ってお灸を体験してみることに。指先に乗るような小さなサイズ、思ったよりずっとかわいい。

「まず、一番今つらいところを指一本で指してみてください。」

辛い右肩のあたりを指でポイントすると、先生は私の右腕を支えながら、まったく肩に関係ない小指の先をぐっと指圧・・・あたたたたた・・・痛ったーい!!!痛いのは肩なんですけど!!

「モトカワさんが痛いって言った肩のポイントが、右手の小指のツボ「小商」を起点にしているグループだったから。どうですか、少し肩が軽くなったでしょう?」

▶ホントだ、なんかそんな気がしますね。肩が辛いと小指が痛いなんて、ツボって不思議。

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うわあ、火をつけた!

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合谷という万能ツボ、ここはすぐ熱がわかります。

「体のツボは経絡(けいらく)で結ばれていて、鉄道路線図をイメージしてもらうといいですね。人間の体には14の経絡のグループがあるんですが、14の路線に700くらいの駅があるって考えてもらうとわかりやすいでしょう。患者さんの辛い場所がどこかによって、攻める路線と駅が違うんですよ。中には経絡のセントラルステーションみたいなものもあって、例えば頭の上にある百会はいろんな路線が集まるところだから百も会うって書くんですけれど、万能ツボと言われているものは、みんなそういう大きな駅みたいなものなんですよ。」

▶同じ肩の痛みでも人によって効くツボが違う、先生のお見立てでココという場所にまず1つ点火、あれ?火が付いているはずなのに、何も感じません。しばらくしたら、じわーっと温かさが伝わってきた。火が消えるまでずっと貼ったままでしたが、ほんわかするだけ、なんだ!なんでもないじゃない!

「ほらね、熱くなかったでしょう?火の始末さえちゃんとすれば危なくないし、熱くないように設計されているんですよ。肩はどうですか?回してみると可動域が広がっていませんか、さっきより腕が後ろに行くでしょう。もう1か所お灸をしてみましょうね。」

▶熱くないのがわかったので、余裕でもう一つ貼ったのは有名な「合谷」というツボで、上半身の万能ツボだそう。2つ目はすぐ温かさが伝わってきて、ちょっと熱いかも?

「熱いですか?じゃあもう剥がしちゃいましょうね。」

▶もういいんですか?

「面白いでしょう。同じ右手で同じお灸なのに、あんまり感じないところと、すぐ熱くなるところがあるんですよ。弱っている場所はなかなか熱を感じない、冷えているんですね。逆に元気なところはすぐ熱いと思うんです。ツボに気が通っていれば、すぐ感じるし、気が停滞していると感じない。1つ燃え尽きるまで貼っても温度を感じないなと思ったら、ほんわか温かいと思うまで2個とか3個続けてお灸をすると、効果があるんですよ。」

「気のせい」って経絡やツボと関係ある?

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聖人でなくてはいけないんです(笑)

「気は大事です。気のせいでも、元気になったのならそれでいいんです。鍼灸の施術は、ツボに刺激を与えて経絡に気を通し、回復を促すことが目的なんです。患者さんの心身が緊張していては効果が低いので、リラックスしてもらうことが大事。だから、鍼灸師との相性も大事です。鍼灸治療の前に、患者さんの問診をするのですが、それも信頼関係がないとうまくいきません。辛い、痛いは体からのヘルプ信号ですから、どういうふうに具合が悪いか聞くことから始まります。それから仕事、睡眠、生活習慣、好きな食べ物や、便通、女性なら生理のことについて伺います。施術の前にその方の体質や生活を知ることが大事。今の辛さは、その中の何かが蓄積されたのが原因なわけですから、不調の原因を突き止めて、生活を改善することも、東洋医学では大事なことです。いかに心を開いていただけるかで治療効果が左右する。その上で必要に応じて鍼やお灸を施術します。」

▶鍼灸の先生は腕だけじゃなくて、人間性も大事なんですね、悪いことはできませんね(笑)


「つねに清く正しく聖人でなくてはいけないわけです(笑)冗談はともかく、鍼灸医を信頼していただき、今受けている治療は効果がある、自分は快方に向かっていると思ってもらうことも大事です。自己回復力を促す施術ですから、治ろう、元気になろうと思ったほうが良いんです。」

いよいよ鍼を打ってみよう!

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日本の針は独特、痛点をごまかす管がついている。

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いつの間に打ったのかわからない!でもズーンと響く感覚はわかる。

 

 

 

 

 

 

▶手のお灸だけでも、体が温かくなってきて、肩も楽になったけれど、せっかくだから肩に鍼を打ってみようか、ということになり、まずは「鍼怖い!」と警戒態勢の体をほぐすために 肩と腕をマツサージしていただく。

「ほんと緊張しやすいんですね。日本人は痛みに敏感で繊細だから、鍼治療はいろいろ工夫されてきているんです。鍼の刺す刺激よりも、触覚の方が先に感じる仕組みをつかって、ストロー状の筒を通して打つ方法があるんですが、これは江戸時代に開発された古い方法で、筒が鍼より先に皮膚に当たっていることで痛覚を紛らわしてしまうんですよ。鍼灸師が患部を触わりながら打つのも、同じ仕組。さらに糸みたいに細い顔鍼もあります、今日はそれでいきましょう。」

▶鍼医者って時代劇に出てくるけど、そんな昔から今も利用されている高度な技があったんだと思うと、ありがたい。文化遺産みたいなものだ・・・と言ってる間に・・・え?今、肩に鍼打った?気がつかなかった。肩を触られていることしかわからなかった。でも先生が鍼を動かしているのはわかる。鈍く響く感じで痛いのとは違う。今なにしているんですか?

「鍼を動かして気を通しています。ズーンと響く感じがするでしょ?効いているんだと思いますよ。このあと少し赤くなったり、だるくなったりするかもしれません。好転反応っていうもので、回復のだから心配いりません。明日肩の感じが軽くなっていると思うんだけどなあ。生活が変わらないとまた元に戻ってしまうけれどね。自分のどんな習慣が、どんな不調をおこしているのか、ちょっと観察してみるといいですよ。何がトラブルの原因かわかって排除できれば、毎日楽に暮らせるでしょう。鍼は鍼灸師じゃないと打てないけど、ツボを使うことはだれでもできる。温めたり、押したり、さすったりスルだけでも効果はありますよ。」

おかかえ鍼灸師を持つってステキかも?

▶自分の体なんだから、人任せにしない、それはかっこいいし自由な気がする。思い出してみると、子どもの頃から、自分はこんなとき風邪引くなとか、お腹いたくなる前はやたら甘いモノが食べたいとか、不調のサインって実はちゃんと出ているのだ。そこにちょっとツボの知識を使えれば、元気に楽しく暮らせる気がしてくる。
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「ぼくは『ご自愛』と言っているんですけど、自分を愛する、大事にすることからすべての幸福は始まるんじゃないでしょうか。ぼくは朝起きるとね、まずお腹を触るんです。今日はどうかな?いつもより硬いところや、冷たいところはないかなって。なにか異変があれば、さすったり、お灸をしてもいいし、気になるところをケアすることで、未然に不調を防ぐことができる。ぼくは鍼灸師だからツボの知識がありますが、なくても、毎日観察して、体のクセとかリズムに敏感になっておくこと、自分の体調データを集めて、問題点をわかって対処することで、かなり楽に健康で生活できるようになると思うんです。肩が凝ったからちょっと指圧しようとか、生理痛だから三陰交にお灸しておこうとか、自分で不調を回復へ向かせるスイッチを押すみたいな感覚でツボを使ってみてほしいなと思いますよ。その上で、自分じゃ手に負えないな、とか辛いなと思ったら、鍼灸師に相談してもらって、問題を解決すればいいんじゃないでしょうか。健康のために、地域の人が頼れるかかりつけ鍼灸師をもってもらうっていうのが、ぼくの夢なんです。」

【取材翌日のタコショウカイ・・・】
ドキドキの鍼灸体験、効いたかどうか当日はわからなかったのですが、朝起きたらびっくり、ダル重い肩がなんだか軽い。なによりも朝から元気に働こうという気持ちになっていました。効果あった?元気の気も気なんですよね。教えてもらった小指のツボと合谷はもう毎日指圧、緑のせんねん灸も買いました!あのほんわか温かい感じが、やみつきで、効果があるとかないとかいうより、お灸自体が気持ち良い、もぐさの燃える香りもなんだか癒されます。火をつけるとか鍼刺すとか、怖い怖いと思っていたけれど、あれ以来オ・ト・ナになってしまったんですねえ、もう平気、本も買って興味津津。タコショウカイだけにツボラブ❥です♪
taco(取材・構成、写真 タコショウカイモトカワマリコ)